小窓から朝焼けが見える。雲の隙間から出る光が、何かに反射して私の顔に当たった。


「う……ん」


眩しくて耐えきれなくて目を覚ました。何か朝陽とは別の強い日差しが瞼の裏を刺激している。


その犯人は、花瓶だった。


薔薇はまだ蕾のままで、露が朝陽に当たってキラキラしている。綺麗。


「早く咲いてくれないかな……」


私が小窓のカーテンを開けた時、ギョッと目玉を飛び出させた。
高級車リムジンがうちに向かって走ってくる。


「毎日迎えに来るからね」


会長の言葉を思い出した。血の気がサーッと引いていく。


(やばい、着替えてさっさと朝ご飯食べないと……)


断ろうと思えば断れる。だけど、今の私は会長の奴隷。刃向ったりしたら何されるか分からない。


トーストを口に含ませて、牛乳で流し込む。ドタバタと玄関を開けると、ちょうどインターホンを押そうとした安元が立っていた。


「おはようございます、もとか様。お迎えに参上いたしました」


「お、おはようございます……」


車で会長は「よぉ!」とポーズをとっていた。
そういえばメガネを外せば可愛いよって言われて、怒って生徒会室から出てっちゃったんだよね。蝶番をちゃんと耳に乗せる。


(こんな眼鏡外したって、地味子は地味子じゃないか)


からかうのもいい加減にしろ!!


「何膨れ面してんだ?」


会長は私の顔を見るなり、ハハハッと笑った。誰のせいでこんな顔になってると思ってるんですか!?


顔はイケメンかもしれないが、心は悪魔だ。人をからかうことに喜びを感じる悪趣味の持ち主。


「膨れていませんっ」


「ほぉ~?」


長い首を私の顔まで伸ばしてきた。