玄関に行くと、くつ箱に寄りかかりながら、私を待っている、丹羽くんの姿があった。


私に気がついたのか、顔を上げ、目が合う。


「おせーよ、何にそんな時間かかってんの。」


いつもと変わらない丹羽くんなのに。
さっき、自覚してしまったせいで、どきどきする。


「遅れてごめんね。
望月さんに傘、貸してて。」



「…またそんなことして。
優しいっていうか、お人好しっていうか。」


「だって、困ってるひと放っておけないし。
それに、置き傘あるから、大丈夫だよ!」


ほら!と傘置きを指差すと。

「あれ?」


春から置き傘しているはずの、ビニール傘はそこになかった。