白っぽい空間に響く歌声。

この歌…あぁ、どこか懐かしい…

この世の物とは思えない、余りに美しすぎる歌声に、全てのものが浄化されていくような気さえする。

歌声の発生源を探ると、これまた美しく可憐な女の子が、瞳を閉じて歌っていた。

白いワンピースに、腰まであるダークブラウンの艶やかな髪。言うまでもなく、顔も整っている。彼女を構成する全てが美しい。

それだけではない。彼女の背中から翼が生えていた。けれど、純白、ではない。薄っすらと金色の、神々しい翼だ。

その美しさに思わず目を奪われる。


スッと女の子は歌うことをやめてこちらを見据えた。凛とした真っ直ぐな瞳だ。

こちら、という言葉は間違いだ。もっと別の方向を見ているらしい。


『俺は俺の願いを叶えるために君を殺す』

声が聞こえて振り返ると男の子が立っていた。顔立ちは可愛らしくも爽やかだ。しかし、背中から生える翼は、黒い。

女の子はどうやらこの男の子のことを見ていたらしい。

『…どうして?』

か細い女の子の声とは対象的に、男の子は黒い弓矢を力強く構えている。矢の矛先は、無表情ながらも戸惑いを隠せないでいる女の子だった。


『…どうしても、だよ』


苦しそうな顔をしているのは、二人ともだった。

男の子は何かを決めたのか、弓を握る手に力を入れ、弓矢を引っ張る。



『…バイバイ、俺の愛しい人』


放たれた黒き弓矢が射抜いたのは、女の子の心臓だった。