夢を見ればいつも現れる白い空間に、


"……月子……"


遠くで聞こえる、あの声。

いつも夢で聞こえる、あの声。

なぜだか泣きたくなるほど懐かしく感じる。


"……月子……"


誰、だっけ…


"…お願い…歌姫を…"


歌姫…私はそれが誰なのかを知らない。

貴女は知っているの?


"…えぇ…"


それは一体誰?


"…貴女のそばにいるわ…"


その声を聞いた瞬間、蘇った。

幼かった私の、大事なもの。

なくしていたわけではないけど、忙しい日々の中で忘れていた、大切な記憶。

『どれだけ離れていても、いつも貴女のそばにいるわ』

母との思い出。

幼い私にはその言葉の意味は分からなかったけれど、今なら分かる。

私もそう思うよ、お母さん。

貴女はいつも私のそばにいる。

私の心のいちばん深いところで、いつも貴女の存在を感じている。

って、あ…


もしかして、

もしかして、この声の持ち主は、


貴女なのですか?



「お母さん…」