ふふ。下品。

そんな滑稽さに笑いがこみあがってくる。


「なち、きょうもあいつのことかんがえてるんだろ?」


そういう男は楽しそう。
こいつは、快感とスリルさえあれば悦ぶ。


「…あ、たりまえでしょ」


息を吐いた。


放課後、理科室。
後ろに、窓。
その下、サッカー部。


「…ぅうう、あ」


軋んだからだが反射で彼をおさえようとした。
悪いのはあたし。
そんな理性が反射を邪魔して、変な方向に腕がいく。


ぱりん。


頭の近くに放置されていた、割れたままのフラスコ。
それにぶつかって、落としてしまった。
割れていたのに、更に細かくなったそれ。


「…いたい」
「どっちが?」
「どっちも」

顔をしかめながら、血がにじんできた手の甲を眺める。

ガラスがぶっすり刺さってしまったようだ。
きれいな赤が、てらりと光った。