「どうしたんだい?」

「西村さん!!」


助かった…
いや、でもこの人に何があったかを話す訳にはいかない。

そうか、とりあえずこの場所から離れれば良いんだ。


「あ、あの…
大学の部室に忘れ物をしてしまって、取りに向かう所だったんです。

もし時間があれば、大学まで連れて行ってもらえませんか?」

ライターは首を傾げたが、怪訝そうな表情を見せる訳でもなく車に乗せてくれた。

「でも、今から行っても真っ暗じゃないの?」

「大丈夫です。他のサークルの人達も、多分いると思いますから…」

「なら良いけど」


ライターは直ぐに車を発進させた。振り返ると、数十メートル後方にあの男の姿が見えた。

これで逃げ切れる――

そう思うと、幾分気持ちが楽になり、状況の分析が出来る様になってきた。


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