そんな話をどこで聞いたのか

ぼんやりとしか思い出せない。


「何でも願いが叶うらしい」

「その店でかい?」

コソコソと話す男たちの声
場末の酒場通り
折れた腕をかばいながら
私はゴミ箱の隙間に小さくなり
自分自身の気配を消していた。

「そんな話があったなら、世の中みんな金持ちだらけだろうさ」

「いやいや、向こうも相手を選ぶらしい。店の扉が開く奴と開かない奴がいるそうだ」

「裏がありそうだな」

「ああ、願を叶えてもらう代わりに、こっちも覚悟を決めて何かを差し出すってさ」

「何を差し出す?」

「そんなの知らん」

「頼りない話だ。店の宣伝だろうが」

「だろうなぁ」

その話はそこで終わり
男達は笑いながら次の話題に花を咲かせ、私の前を通り過ぎて行く。

あぁ

その店なら
私も知っている。