すぐ目の前にあるのは、サラサラのプラチナブロンド。白く透けるような肌に、深い森の奥にある湖面を思わせる穏やかなブルーグリーンの瞳。

そして、それらで構成する造型は――ギリシャ彫刻もかくや、な超絶美形。その端正な顔があり得ない位に近づいて、少し薄い唇が甘い声で囁く。


「……だから、僕は確信したんだ。君こそ神話に綴られた伝承の姫に違いない……って」


こ、これ顔を以上近づけないでえぇっ! 息が頬に掛かってくすぐったい。

それに、キラキラしすぎて目が潰れる。本気でまばゆい王子様は、あたしの無言の抗議をまるで解ってらっしゃらない。


というか白磁色の石壁に身体を押し付けられ、両手で頭を閉じ込められてどうしろと!?


ムダなキラキラオーラに精神力がガリガリ削り取られそう。というか確実に減ってる。


「だから、僕の妃になってこの国を導いて……ユズ」


ぎゃああ! 頬に手をやらないで。なにその潤んだ瞳、無駄にただ漏れな色っぽさ!


あたしは、ただひたすら叫んだ。


「む、無理! あたしはただの空気ですからっ!!」