ちゃぷん………。


お風呂のお湯が、私の動きに合わせて揺らぐ。

ぼんやりと考え込んでいる私の耳に、その音がやけに大きく聴こえた。

正直、放課後のあの出来事から、家に帰ってきて今に至るまで、心のなかはごちゃごちゃしていた。

思い出して混乱したり、現実逃避のようにぼんやりしたり。

今も湯船に浸かりながらぼんやりしていたが、ふと思い出してわたわたしはじめる。

―――何なの、アイツ!何で急にあんな……。

井ノ上の顔が目の前にあると気付いてから椅子に落ちるまで、ほんの一瞬ともいえるくらい、短い時間だった。

ちょうど井ノ上と間近で目が合って。

それから私に触れる直前に井ノ上が目を閉じて………。

その一瞬でキスされる!と思ってしまった私はとっさに避けたから、お互いの唇が触れあうことはなかった。

ただ、ホント私の唇にギリギリ触れない場所に井ノ上の唇が触れた感触はした。