高校からのバスケ部の練習は思った以上にハードなものだった。
週4日の練習、土日の練習試合に合宿。
何より平日の練習すら、筋トレから体力作り、ランニング、ヘトヘトになってからやっとバスケの練習。
吐きそうになったり過呼吸になったりしながら、それでも不思議な程、練習を休むことはなかった。
真穂は、足は速かったので、梨花と同じフォワードになった。

梨花はその頃、3Pシューターとして、誰よりメンタルの安定したシューターになっていた。

けれど、全くの初心者で、レイアップさえ決まらない真穂は、基礎練習の傍ら、

朝、梨花と同じように、1日100本のレイアップシュートを日課にしていた。

スタメンにはとうていなれないであろう真穂にとって、もしチャンスが来た時、せめて絶対に外さないように。
それが真穂なりの目標だった。

それでも、練習は楽しかった。
辛かったけれど、人数の少ない中、先輩は優しく、先生は非常に厳しくも暖かく、
キツかった練習を終えた後の冗談まじりの愚痴や話し合い、
メンバーみんなで一緒に帰ることすら嬉しくて仕方なかった。

そんな毎日の中で、真穂はクラスにも千秋のおかげもあり徐々に馴染み、仲良くなっていた。

真穂にとって、大切なのはまだ恋愛より友人であり、
それまでも何人かお付き合いした人はいたけれど、結局長くは続かず、
恋、と呼べるようなものではなかった。

それでも、気になる存在はいた。

彼は、斗真、と呼ばれていた。
特別格好いいわけじゃないけれど、
何故か彼の周りには人が集まった。

真穂は実は最初、他の人が気になっていて、
斗真のことは1クラスメイトであり、
なんとも思っていなかった。
けれど、気になっていた彼と仲良しだった斗真、千秋と4人で話すうち、
斗真の明るさ、優しさに好意を抱くようにはなっていた。

斗真は、最初はなんだかチャラチャラしていて、あまりいい印象は持てず、席が隣になって話すようになったりしたけれど、
まだ特別ではない、クラスの友人、
という感覚だった。

斗真の周りにはいつも和ができていて、
愛嬌があった。

受験の話が出ても、
「倍率1.3倍ってどゆこと?10人受けたら13人受かるってこと?」
なんて言ってはみんなで爆笑していた。

そんな時、ポツンとひとり、和に入れずに寂しそうにしている本を読んでいる子がいた。

真穂は、笑っていて気づかなかった。
斗真は笑いながらふっと動き、その子の隣に座った。

「何読んでんのー?俺にも教えてー」
斗真はそう言った。

わたしは、驚いた。
いつの間にか、斗真とその子の周りには人が集まって、みんなで笑っていた。

千秋は、
「斗真の女好きストライクゾーンすごい!」と笑っていた。

わたしには、出来なかった。
真穂は、ドキドキしていた。

わたしには出来なかったのに。
今なんて、気づくことすら出来なかったのに。

斗真は気づいた。
そして、和に入れてあげることができたんだ。