病院でのことがあってからも、
凪くんはいつもと何も変わらなかった。
いつものように、私を見つけると優しく微笑んで、
いつものように、手を繋いで土手を歩いて帰った。
「どこか具合が悪いの?」と聞いても、
「大丈夫だよ」って笑って、
「くるみは、受験に集中しなさい」って頭を撫でてくる。
本当に毎日毎日、凪くんはいつもと同じで何も変わらないし、
あまりしつこく聞くと、凪くんは困った顔をするから、
もう、聞かないことにした。
気になるけど、心配だけど、
これ以上しつこく聞いたら、嫌われてしまいそうで……
嫌われるのだけはイヤだから、
凪くんが大丈夫だというなら、
その言葉を信じようって、
何度も自分に言い聞かせた。
季節は冬になり、いよいよ受験日まであと2ヵ月となった。
2学期終業式
いつものように帰り道、凪くんと土手を歩いた。
冷たい風が土手を吹き抜けて、私のスカートを揺らした。
「寒いぃぃ」
首をすぼめてマフラーの中に鼻までもぐると、
凪くんは、あははっと笑って白い息をはいた。
「冬休みは毎日勉強だろ?」
「うん、冬期講習もあるし」
「そっか……
あのさ、明日、少しでも会えないかな......」
「えっ......」
凪くんの意外な言葉に、思わず橋の手前で手を繋いだまま立ち止まった。
「ちょっとでもいい、明日のクリスマス、
くるみの時間、俺にちょうだい」