ケータイ小説 野いちご

「秘密」優しい帰り道【完】

●私の秘密
 涙





引き戸が開き、「くるみ」とお母さんに呼ばれて顔を上げた。


「どうしたの?なんかあった?」


お母さんが部屋の中に入ってきて、


私の前に膝をついて座ってきた。


「お父さんが、高校の文化祭に来た」



私がそれだけ言うと、全部を察したかのように、


「ごめんね」とお母さんが私の頭を撫でた。



「もう、おしまいだよ」



また、涙が出てきてしまった。



お母さんは、いつも私にお父さんのことを謝ってくるけど、


お母さんは何も悪くないのに。


「今日も自習室行くの?お母さんもうすぐしたら仕事行くけど」


お母さんは、平日は昼間、土日は夜、


工場でパートをしている。





今まで土日は休みだったんだけど、


中3の夏休み、私が塾に通いだしてから、

土日の夜のパートを増やした。



お父さんはもう67歳だから、退職していて、


お酒ばかり飲んでいる。




「今日は休む」



「そうね、そんなんじゃ、頭入んないだろうし。


ご飯作ってあるから、食べなさいよ。


お父さんは放っておいていいから。


全く.....お父さんには困ったね。


じゃあ、行ってくるからね」



お母さんは、よいしょと立ち上がった。




「いってらっしゃい」


膝を抱えたままそう言うと、引き戸が閉まった。


お母さんには、本当に感謝している。


お母さんがいなかったら、きっと私は中学にも行かないで、

部屋にこもっていたと思う。


こうして、塾にも行かせてくれて、


洋服も、日用品も、私が困らないように買ってくれて。


【貧乏!貧乏!貧乏!】



それはたぶん、


家の前でそうやって自分の娘が、

集団でからかわれているのを、お母さんは見てしまったからだと思う。






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