最近の斗真は少し様子がおかしい。


お兄ちゃんがイタリアに行く事になり、やっと斗真と二人で暮らせる事になった。


ずっと
斗真にとってあたしは妹という存在でしかなかった。


そんな事はわかっていた。


でも、あの夜斗真は……


客とトラブって、酔いつぶれて帰ってきた斗真を支えてあげたくて…


ずっと望んでいた事だった。


ずっと斗真が好きだったから。


斗真があたしを好きではない事もわかってる。


けどそれでもいいの。

そばにいてくれるだけでそれだけでいい。


誰にも渡さない。


誰にも邪魔はさせない。


手の中にある名刺を握り潰しながらそう堅い決心をする。


名刺の名前は、エステティックサロン店長芹澤葵と書かれていた。