「ふええん、また太っちゃうよ~」


と言いながら、手元のチョコレートの大袋を食べる手が止まらない。


放課後の教室で、あたしは泣きながらチョコレートをバカ食いしていた。


「ねぇっ、風牙(フウガ)くん助けてよ~」


顔を上げると、1歳年上の風牙くんが、首を横に振った。


茶色くて長い前髪が、揺れる。


「もう少しで成仏しそうだ。
がんばれ」


風牙くんは、あたしの背後を見て手を合わせた。


そう、あたしの背中には今、とんでもない幽霊が乗っかっている。


それは数時間前のことだった。


名前を呼ばれたような気がして振り返ると、あっという間に取り憑かれちゃったんだ。


その瞬間から、死にそうなくらいお腹が減った。


「そうかそうか、じいちゃん、病気でしばらく何も食べられなかったのか」


風牙くんの隣であたしを見守っていたもう一人、同い年の雷牙(ライガ)も、あたしの背後に話しかける。



あぁ、おじいちゃんの幽霊なのね。


いきなり背中に憑かれたから、見えなかったよ……。


じゃなくて!


目の前の2人の幼なじみ兄弟だって、幽霊が見えるのに!


なんでわざわざ、あたしに取り憑くのよぅ~っ!