「理真さん!」

 がくんと落ちた理真の肩に凛玖が手を伸ばした。だからこそ理真は倒れずに済んだと言える。

「…ごめん、俺…理真さんの体調の悪さに気付かずにはしゃいでて…。」
「…ごめんね、せっかくのデート、なのに…。」

 じわりと理真の瞳に涙が滲む。凛玖と付き合うようになってからもう半年。確実に涙腺が弱くなった。

「車まで歩ける?」
「大丈夫。ほんとごめんね…。」

 瞬きをしたら絶対に溢れる。それを覚悟して瞳を閉じようとした矢先、凛玖の指が理真の目元に触れた。

「…デートより、理真さんが大事だから。だから泣かない泣かない。早く寝ようね。」

 凛玖が自分のことで理真に泣かれるのを苦手としていることは、理真にも痛いほど分かっていた。それは理真にとっても同じだからだ。
 背中に添えられた手が温かくて優しい。凛玖はいつだって優しい。その優しさが弱った身体にしみて、余計に涙が出る。

「はい、乗って。シートベルト締めるね?あとは寝ちゃっていいから。」
「…うん。ありがとう。」
「そこでごめんってきたら、さすがに怒ろうかと思ってたよ。」

 凛玖の優しい笑みにほっとして、理真は瞳を閉じる。涙がすうっと一筋溢れ落ちた。