「“親愛なるジョセフィーヌへ。

私は遠く、遠くへ旅立ちます。

けれど、貴女も来てくれるのでしょう?

私の隣、私の腕の中、私の胸の上、口の上にいてくれるでしょう? 

翼を持って、さあ、おいで、おいで……!

貴女の胸にキスを。

そしてもっと、もっと下の部分にもね!”」





ーーー若き日のナポレオンは、だいたいこんなことを綴った手紙を、妻・ジョセフィーヌに送っていたらしい。

まるでメールストーカーである。

それなのにナポレオンときたら、死してなおそのラブレターのことを誇らしげに語っている。


「まあ、我が輩の愛情は他の男よりもずっと強かったろうからな。
イギリス新聞で笑ものにされたことは別にして、情熱的な話だとは思わんか?」


昼休みのキャンパス。

丸いテーブルで、ナポレオンはあたしの向かいの席で弁当の箱を開けながら長々と語っている。


……すみません、情熱的だけど、キモいとしかいいようがないです。


キスって胸にするもんじゃないよね?

しかもその“もっともっと下”って、どゆこと?

いや、だいたい何が言いたいのかは、わかるんだけどさ……。

想像したくないじゃん。

しかも食事中に。

こんな下ネタ満載の話を聞くんだったら、もっと早くお弁当を食べておけば良かった。

食欲失せちゃうよ……。