暗闇に目が慣れても、闇は見通せない。

 ざらついた闇の感触に、物陰でなにかがうごめいたような錯覚に陥る。

 背筋を震わせて、生唾を飲む。

 喉がカラカラで、唾を飲むのも容易じゃなかった。

 自分の唾を喉に詰まらせて、窒息してしまいそう。

 私は毛布だけを羽織って、ソファーから足を下ろす。

 と、フローリングではない別の感触が足裏に伝わった。

 暗闇の中に目を凝らすと、布団が見える。

 ソファーからずり落ちたのかと思ったけど、そうじゃない。

 布団の端から、おじさんの生首が出ていた。

 すやすやとおじさんが布団に包まって眠っている。

 思わず、笑みが零れた。

 そっと手を伸ばして、おじさんの髪を撫でる。

 やわらかい髪の感触に、愛おしさが込み上げてくる。