その日の夜、美里が突然うちに来た。


ついさっきまで泣きじゃくっていたかの様な腫れぼったい瞼をして、

私を見ると玄関先で再び涙を溢れさせた。



それを見て気付いた。

美里も今日は悠紀先輩とデートだった。

彼女も私の様な目に合っていたのだと、やっと考えが自分以外に向いた。



自分の身に起きた不幸で頭が一杯になり、美里の事を忘れていた薄情な私。


一方美里は、こうして私の元に駆け付けてくれた。



申し訳なくて何と言っていいか分からず、

美里を部屋に上げてからも言葉を無くして黙り込んでいた。



すると美里が泣きながら私に謝って来た。



「ごめ…千歳ごめん…あんな人紹介してごめん…

私…悠紀先輩に…無理やり…

初めてだったのに…本気で好きだったのに……

彼女にはしないけど俺とヤレたら自慢できるよ?って…

千歳もでしょ…?

悠紀先輩が笑いながら言ってた…

今頃千歳も…ヤラレてるって…

ごめん…本当にごめんね…」




土下座する勢いで、床に額を付け泣きながら謝る美里。



その姿を見て戸惑いながら打ち明ける。

「私は…ヤラレてない…」と…



パッと顔を上げた美里は目を丸くして私に聞き返す。



「ヤラレてないの?」



「うん…押し倒されたけど…

途中で…潤一先輩が突然具合悪くなって……

逃げる事が出来た…」