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しんと静まり返る。


その男は黙ってその場に佇み、裁判官の話に耳を傾ける。


「被告人は長年連れ添った妻を、包丁で刺殺。
その後、取り調べをする警察官への暴行。
その事になんら異存はないですか?」


「…はい、何もないです」


男はぎゅうっと、拳を強く握りしめる。


「被告人が逃げ去る姿を目撃したものもおり、証言もあること、物的証拠から殺害したのは被告人で間違いないでしょう」


淡々と裁判官が話す言葉を男は黙って聞きいれる。


「判決を下す」


緊張の瞬間。


「被告人を殺人罪及び、暴行罪として懲役13年と処す」



…男はその判決に心の中で笑った。


誰もが男の無実を聞き入れなかった。

誰もが男を犯罪者に祭り上げた。


弁護士に言われて、求刑より実刑を軽くしようとそう説得され、納得いかないことも全て反論せずその男は聞き入れたのだ。


納得などしていなかった。


だけど、その時の男には無期懲役でないことに喜びを隠せなかったのだ。



これで、復讐が出来ると。