この町の天気は、雨。



ザーザーと土砂降りの雨が、



サンドストームのような音楽を奏でる。



綾介は黒い大きな傘を差して、



駅までの道を歩いていた。



どんよりとした分厚い黒い雨雲は、



綾介を包み込む。



歩くたびにバチャ…バチャ…と、



水が跳ね、制服に掛かった。



駅に入り傘を窄めると、



先から雨水がポタポタと垂れ、



水の跡をつけていった。



改札口。



「おはよう」



「おはよ」



綾介と久琉斗は互いに挨拶を交わす。



電車に乗ると、



案の定とでもいうべきか、



床が濡れ、



幾つもの黒い足跡が



重なってついていた。



「なぁ、
久留島がモルテになる可能性は、
結構高いんだよな…」



綾介が濡れて光る床を見ながら、



久琉斗に言葉を投げかける。



「ん…まぁ、きっと高いと思うけど…
それがどうしたんだ?」



「いやなんか…可哀想な気がして」



「は?綾介、お前、
ヤバかったじゃねえか。
久留島に命令されて、
モルテになりかけて。
まぁ、俺もヤバかったけど」



「ああいう性格になったの、
周りの人間の所為であって、
久留島自身の所為じゃない気が
するんだよな」



久琉斗は綾介の話に、



真剣に耳を傾ける。



「で、周りの人間がそういう風に
久留島を教育したせいで、
モルテにされて…
って俺何言ってんだろ、
自分でも解らなくなってきた。
忘れてくれ」



「なんだそれ」



久琉斗が苦々しく笑う。



「でもまぁ…それも解る。
けど久留島自身、
それにブレーキをかけることは
出来た筈だろ?」



綾介がコクンと頷く。



「それは久留島の所為でも
あるんじゃねえか?」



いつも二人がおりる、



ちっぽけな駅に着いた。