「あー!疲れた!!」


 朝の、生徒が誰も来ていない時間。


 隣のクラスの担任の桝谷(ますや)先生が叫んだ。



 俺は、今から30分前に学校に来た。


 理由は、暇だったから。


 学校なら、小泉に会える。


 ………。


 バカか、俺は。


 小泉には、もうずっと避けられている。



「まだ、朝ですよ。」


 桝谷先生は、俺より一つ上の、まあ新任の先生。


「池谷先生は、すごい!だって、いつも一番乗りじゃないですか。」


 小泉に会いたいって思うとやっぱり早く来てしまう。


 今来た桝谷先生は、鞄から分厚いプリントを出す。


「暇なんで。」


「ハハッ。そういえば、池谷先生は彼女とか居ないんですか。」


「まあ。」


 若い先生が二人でいる。


 こんな話題位は出るだろう。


「俺、ここに彼女探しに来てて。」


 桝谷先生は笑いながら言った。


 そんな先生もいるんだ。


「でも、見つからない……」


「悲しいですね。」


 そう同情しながらも、笑いが込み上げてきた。