俺と田村真琴(まこと)とは、かれこれ10年来の付き合いになる。と言っても彼女と色恋沙汰は微塵も無く、純粋に友達同士の関係だ。

真琴の髪はいつもショートでボーイッシュだから、よく男子に間違われるという。よく見れば可愛い顔立ちをしているのだが、正直なところ俺も彼女に“オンナ”を感じた事はない。ただの一度も。それは真琴も同じだろうけども。


真琴とは大学1年の時に同じクラスになり、以来不思議と馬が合い、互いに社会人となった今でも付き合いが続いている。と言っても特別何かをするというわけでもなく、一緒に飯を食ったり酒を飲んだり、互いの近況を話したり、つまり普通に友達付き合いをする程度だ。

真琴はアパートに一人で住んでおり、俺はちょくちょく彼女のアパートに入り浸る。その日の日曜も、暇だった俺は真琴のアパートで寝転がってテレビを観ていた。


「涼?」


不意に真琴が俺の名を呼んだ。そう、俺の名は中山涼(りょう)。真琴もそうだが今年で28歳になった。もちろん独身で、普通にサラリーマンをしている。ちなみに真琴は信用金庫に勤めているらしい。


「お、おお」

「あんたさ、まだ彼女作らないの?」