少し暑くなってきた高2の6月の下旬のこと―――



「はーいじゃあかいさーん」



帰りのホームルームが終わり、みんな解散していく。



「芽依ーっ!今日は部活?」



親友の原友菜(はらゆうな)が、カバンを持って、帰る準備をしている私のところにやってきた。



友菜はしっかり者でサバサバした、お姉ちゃん的存在。



そして私は桜本芽依。
絵を描くのが好きで、美術部所属。
クラスでは地味な存在であまり目立たない。



「うん、今日部活あるんだー……だから今日は一緒に帰れないや」



「そっか……」



友菜が残念そうに口をとがらせる。



そのときだった。



「速川くん、今日カラオケ行かない?」


「えー!ファミレス行こうよ!」



教室でキャッキャ騒ぐ女子と男子たち。
その中心にいるのは……



「速川くん、相変わらずの人気ね」



友菜は感心したように言う。


そう、うちのクラスの爽やか王子の速川楓太くん。