――――いつからボタンを掛け違えてしまったのだろう。




 止むことなく近頃じとじととしばらく降り続ける梅雨真っ最中の6月の今日、校庭に出来た一面の湖にガラス越しながら視線を泳がせつつ、窓際の彼女はそうぼんやりとその一言を頭に浮かべた。



 今の彼女に思考はない。


 意思も意識さえも無用の長物と化している。




 すべてはあの男のあの言葉から動き始めた。