私立カメリア女学園は低所得世帯の美しい娘をエグゼクティブの花嫁候補として教育する機関である。

 玉の輿というのは、言ってみれば女に許された古典的な立身出世の手段である。中産階級より上の家庭に生まれた女子なら、高い教育を受けて知的な職業に就く機会を得られるが、貧しい家庭の娘がその機会を得るのは極めて困難だ。持たざる者は持たざる者ならではの論理を振りかざし、たくましく生きなければならない。「愛があれば金などはいらぬ」などときれいごとをほざいていたら、貧しい家庭はますます貧困にあえぐ一方だ。

 人間は常に向上しようとする生き物である。生まれた環境が貧しければ、それから抜け出そうとするのが人間の自然な感情である。同校には日本全国から選りすぐられた美少女が集まり、階級の階段を一足飛びに数段飛び越えようと、日々花嫁修業に励んでいる。