それからというもの、志穂美のもとに優二からの連絡はなかった。話はまだ終わってないというのに、彼はこのまま逃げ去ろうとしている。まったく卑怯な男だ。

 彼の不実な態度にいいかげん愛想も尽きてきたが、何か仕返しをしてやらないと気が済まない。自分一人だけ幸せになんかさせないからと志穂美は思った。志穂美は「スミレちゃん」とやらの居場所をつきとめて、彼女に婚約者が二股を掛けていたことを暴露しようと考えた。二十歳そこそこのうぶな小娘がその事実を知ったら、さぞかしショックだろう。

 復讐の鬼と化した志穂美は、インターネットで私立カメリア女学園の情報を検索する。ネット上にあるカメリアの公式ホームページには、ごく普通の女子教育機関を思わせるコンテンツしか載っていなかった。中等部、高等部、短期大学と学校ごとのカリキュラムを説明し、生き生きとしたキャンパスライフの写真が掲載されている。そのホームページはごくありふれた私立教育機関の紹介にしか見えない。サイトのどこを探しても、「本校は全国の貧しい家庭から美少女を募り、無償で良妻賢母になる教育を授けています。学生たちは皆結婚するまで処女を守ります。それがエリート男性に対してのセールスポイントとなり、彼女たちは玉の輿に乗ることができるのです」などという文句は見当たらなかった。あたかも、いかがわしい宗教団体がその本当の姿を公式ホームページ上には表さず、表面的な美しい言葉だけを連ねているのと同じようなものだ。