「和歌ちゃん‼今日の試合、絶対勝ってねっ」



元気いっぱいの蓮見先輩の声と同時に、背中への強い衝撃が私を襲う。



「ひゃっ……‼‼⁉」



蓮見先輩…あなた、私に…容赦無く突進しましたね……。



「蓮見先輩も、熱中症対策は大丈夫ですか?」



痛む背中を摩りながらそう言うと、蓮見先輩は鼻を膨らませながら頷いた。
子供のようなキラキラとした眼に、私は半歩下がる。



「蓮見!音出しすっぞーー!」



いかにも爽やか系男子が、蓮見先輩目掛けて声を張る。
ピシッと着こなされた制服、綺麗に梳かされた黒髪。



校則違反とは無縁だろうこの人は一体……?



「はーいっ。あ……彼は真鍋君って言ってね、私と同じパートなんだぁ‼‼」



辺り一面に花を散らせながら、蓮見先輩は笑った。
先輩の言う通り、彼の手には銀色のトランペットが握られている。



「蓮見っ‼」



「ん〜、真鍋君ってば煩いっ‼今行くってっ〜〜‼‼」



「煩い⁉」



ちょっ……先輩方……。
こんな白昼堂々と口喧嘩しないで下さいよ。



ここ人結構居るし、地味に視線痛いんですけど……。
何よりも我慢ならないのは、私を挟んで喧嘩してることっ。



本っ当っに、勘弁して。



「真鍋君ってばきゃんきゃん喚いて子犬みたい‼‼でも、全然可愛くないんだからねっ」



「関係ないだろっ、俺は音出し始まるって言っただけだし?」



「分かってるって‼‼年寄り臭いから同じこと何回も言わないでよぉ」



「言わせてるのは、他でもない蓮見じゃん?」



「うーるーさーい‼‼」



でも……結構良いコンビ?
あの二人って…。



私は気配を殺して先輩達の元を離れると、背後から聞こえてくる二人の喧嘩に吹き出した。



喧嘩するほど仲が良い。



そんな二人の喧嘩は、後十分ほど続いていたとか……。