「……じゃあ、このトップスとパンツは?」
「お洒落! さすがアズ様です。
これで今度のデートはOKですね」
「……そうだよもう、沙織が深瀬君と付き合ってるなんて全然知らなかった。
それに、こんなところで"アズ様"はやめようよー……」
「ふふ、偶然知り合っちゃいまして。
"アズ様"が史人君の友達だってことに私は驚いたんですから!」
……桜花学園高等部を卒業し、大学に入ってもう1年以上。
今日は、"アズ様"と呼ぶのをまったくやめない沙織と、いつもの地下街に買い物に来ている。
……思えばこのお店は、紺と初めて買い物に行った場所だ。
ハンガーにかかっている服をかちゃかちゃと眺めていたら、ショッピングバッグを持った沙織が帰ってきた。
「すいません、付き合ってもらっちゃって。
もう一個、本屋さんも寄りたいんですが……」
「あぁ、いいよ。時間はたっぷりあるんだし」
高いポニーテールで結った、腰に届こうかという長さの髪をはらって答えた。