「吉田…さん?」

美香は振り返った。
そこには女の人が立っていた。

「えっと…ごめんなさい。誰でしたっけ?」

女の人は答えた。

「クラスメイトの顔くらいは覚えてくれると嬉しいなぁ(笑)」

「ごめんなさい!ちなみに私は吉田じゃなくて吉井です」

「本当に?ごめーん!」

「それであなたの名前は?」

「私は早瀬七海(はやせななみ)よ。七海って呼んでね!ねっ美香!」

「う、うん」

美香は戸惑いながらも返事をした。

「それで私に何か用でも?」
七海は答えた。

「美香は佐々木先生といつから知り合いなの?」

「ぇ。なんで?べ、別に知り合いなんかじゃないよ」

「いいよ。隠さないで。私一週間前に中河公園で二人が話してるとこみてるんだから」

美香は考えながらも答えた。

「ああ。あの日か。たまたま誰も先生の歌聞いてなくて私だけ聞いてたから話してみただけよ」

「うそ!雨降ってきたら二人で手繋いでどっか行ったじゃない」

七海にこんなにも見られていたなんて美香は思いもしなかった。

「雨が降ってきたからコンビニに傘買いに行っただけだから。てか絢と一緒だったし。なんでそんなこと聞くの?」

七海は顔を俯けた。
そして少し間を開けてから美香を睨みつけた。

「私、その時から佐々木先生のこと好きなの。だから美香になんて負けない」

そう言って七海は体育館へ走り去った。

美香は始業式を受ける気分でなくなってしまい自分のクラスへと戻った。