《6月10日 瑚堂学園 三年三組》


「そういや、昨日部活終わって帰った時さ、すげぇ格好してるのいた。笠被って、僧侶っていうのか?とにかくそんな格好してる奴がいてよ」


「何?コスプレ?マジで?」


「マジマジ、一人で歩いてて、コスプレかは判らないけど。しかも格好だけじゃなくて何か名前知らないんだけど、杖みてぇなの持ってた」


「杖ったら?」


「何かシャラシャラ音立ててる奴。先端にわっかがあって、それが鳴ってた」


「だから何だよそれ、知らねぇのかよ」


朝、学校に登校した友人同士で繰り広げられる会話。数人ずつのグループの輪が複数あり、そこから教室全体に喧騒の渦が巻き起こる。


そんな、一日の始まりともいうべき時間帯に、不機嫌な声を出す者がいる。


「うっせぇなぁ、ったくよ」


近くにいる者には確実に聞こえたその言葉。昨日出された宿題をやっているクラスメイトが、声の主であった。