「せんせーばいばーい!」


「ばいばい健くんまたねー!!」


親に手をひかれ、子供達が次々と帰っていく。


最後の子供を門のところで見送ってから、あたしはホッと安堵の溜め息を吐いた。


「弥生先生、お疲れ様」


「あ、園長、お疲れ様です」


教室へ戻ろうと歩き出したら、外廊下であたしよりも年配の女性が、柔らかい笑みを浮かべて立っていた。


あたしは小走りで側へと駆け寄る。


「ごめんなさいね、こんな日までお仕事押し付けちゃって」


申し訳なさそうに眉を寄せて、園長はあたしの手を取った。


「まあ、こんなに荒れて……手荒れの時は言ってちょうだい、洗濯くらい私がするわ」


「いいえ!大丈夫ですよこれくらい!
園長こそお忙しいんですから、それくらいあたしがします」


握られたままの状態では顔の前で振ることもできず、顔だけ一生懸命に横に振り答える。


あたし、小川弥生はこの保育園で保育士として勤めている。


短大を卒業後すぐこの保育園へ就職し、今年で6年目だ。


あたしの手を撫でて泣きそうな顔をした園長は、実はかつてあたしがお世話になった先生である。


就職時、恩師がいつの間にか園長になっていて、心底驚いたのを今でも覚えている。


「今日はもうあがってちょうだい。
あとは私がやっておくわ」


「でも……」