その日、つまりはサーカス団《イグレシア》が倫敦市で公演を行い始めて少したった頃。
徐々に客が増えて団も安定し、仕事も少なくなった私、フミは離れに来ていた。
様々なテントから離れたここは正しく離れ。
そこに《占い》とだけ書かれた看板がかかっている。

「お邪魔します!」

closeと出ているものの占いの客に対して出しているに過ぎない。
団員はいつでも対応してくれるのだ。

「……久しぶりだな」

食事中だったらしくテーブルにはカレーが乗っていた。
まだ団の食事時間ではないのだがこの男には関係ない。
この男はサーカス団《イグレシア》には所属していないのだから。
所属しているのはあくまで《教会》。
男は《教会》の占い師、《ウラ》と呼ばれている。

「カレー?この近くで売ってるの?」
「ああ、カレーライスだ。すぐそこにあった。チェーン店らしいがなかなか旨いな」

一口もらうと確かに美味しい。
団の食事でもカレーは出るもののインド系のナンと一緒に食べるタイプだ。
日本のご飯と食べるカレーライスも出してもらおうと頭のなかにメモする。

「それで君が来たということは一段落ついたようだね」
「うん。客入りは上々、パフォーマンスも精度が上がってきてるし問題ない……んだけど」
「……あの人はまだ目をさまさない、か」

頷くとウラはカレーライスの最後の一口を口に運んで考え込んだ。