クリスマスまであと少し、プレゼントは詰め終わった。

トナカイも空を翔けぬけてウォーミングアップ中

ソリの調整も済んだ。

あとはゆっくり休んでヒゲを整えて着替えて出発だ!!

暖炉の前で届く手紙を読むおじいさん、もう少しで出発…

ん?音がする?


トントン



トントン…

おじいさんの家のドアをノックする音がする。

ガタッ

椅子から立ち上がりドアに向かって歩く

おじいさんがドアを開けるけど誰も居ない

ん?

おじいさんは振り返る

さっき座っていた椅子を見ると…あの時の魔女が座っている

どうしてここに!?


魔女は話し出す…

「何十年振りかな、元気そうだな」

夢を配ることで自分も元気をもらってますから、魔女は歳をとらないからあの時のままですね。

「それは目に見えてる現実なだけでそれがすべてじゃないんだよ、わたしも歳をとったよ…長い旅をさせられたからね」

旅?

「いや、それはいい聞き流してくれ」

…そうですか。
ところで今日は突然どうして?

「手紙を持ってきた。この願いを叶えて欲しい…」

魔女の願いですか?

「…違うよ。サンタ、君はトナカイとソリでどこまでも行ける。そして戻って来ることもできる。私が託した力だからな。ただし行けない場所もある」

行けない場所?それが手紙と関係が?

「さっき言っただろ?目に見えることだけが現実じゃない、場所もそうだよ」

…魔女が何を言いたいのかわからなかった

「まぁいい、私は手紙を持ってきただけだからな…」

それはどういう意味ですか?


「その手紙を読んで見るといい…また来るよ、いつか、ふぅ…君たちのせいで疲れたよ」

君たち?!

「私も忙しいんだ、またな」

そういうと魔女は消えた




何だろう…随分と古くなっている封筒…

封を開けて

手紙を開く



っ!!

まぶしい!!


手紙を開くと辺りが光に包まれていた

森の中、木々の間から見上げる星はまるで木に飾りをつけたようだ

?!

この景色は

もう何十年…どのくらい経つのか

大好きな人と一緒に見た景色

この景色を二人で見て

家に帰って木にロウソクの灯りを灯した。

今ではクリスマスツリーと呼ばれてる…

懐かしいな…

しばらく歩いてると何か見える。

家?!

森を抜けて家を見ると明かりがついている。

ここは…もしかして!

!!

走ってドアを開けると

一人の女性がいる。

自分が住んでいたところ!もしかしてこの若い女性は!!

どうして…

おじいさんは話しかける

「あの…」

女性は微笑みながら言う

「お久しぶりです」

これは夢なのか…

「夢と思ってますか?…魔女さんから手紙を受けとりませんでしたか?」

…もらった!
だけど…
どうして!!??

「私が頼みました。送れない手紙を魔女に託して…彼女は何年もかけて私のところに来ました。」

そんなことが…

「魔女ですから…私の病気も治してくれたんですよね。貴方が一生懸命働いて買った指輪と引き換えにしてまで…。あの時、私見てました。指輪をはめてくれたこと…私は直接ありがとうっていいたくて…。あの…そうだそうだ、私の願いは手紙をみてください」

手紙を読む…

「もう一度だけ会いたいです。一緒の時間を過ごしたいです」

そう書かれていた。

…指輪…見てくれてたのですか?!

「はい。ふふふ、話し方が変ですよ」

なんだか久しぶりだから…

よかった
見てくれてたんだ…
ちゃんと渡せてたんだ…
…よかった。。

ここがどこなのかわからないけど…生涯愛した女性とまた会えた…

「魔女さんは何も言ってなかったですか?ふふふ、彼女らしい」

「みんなのサンタクロースになっちゃったけど、わがまま言っちゃいました。あの時の貴方に会うのなら大丈夫でしょ?」

あの時の?!

鏡に映る自分を見ると、若い頃の姿が…

あの頃二人で過ごした懐かしい時間が目の前にある。家具や古くなった服…ロウソクに灯る明かりや食事。

渡せなかった指輪は渡せていた…彼女は見てたんだ。。。

だけど…
願いをしたと言う事は、魔女は願いを叶える時には何かを引き換えにしたはず…

「…しましたよ」

何を??

「貴方の持ってるその指輪…」

指輪?

彼女の指を見ると指輪はなかった…

どういうことだ…指輪は彼女の指に…

そのあと落ち込む自分を見て

魔女は同じ指輪を持って来た…

自分が買ったものじゃなくて同じ形で魔女がくれたものだと思っていた…

「指輪を私がもらってからしばらくして魔女は私のところに来ました。そして、貴方のことを教えてくれて…直接渡せなかったことを悔やんでいると…。
だから私は魔女に願いを言いました。その代償として魔女が求めてきたのが貴方がくれた指輪。
私は魔女に指輪を渡した…その指輪を魔女は貴方に渡した」
「魔女が何も言わなかったからきっと同じ形のものをくれたと思ったのでしょう」

だけどどうしてそんなことを?

「貴方が指輪をくれた日に…私に指輪が見えてなかったんじゃないかって気にしてたでしょ?!」

「だから、時間がかかっちゃったけど…もう一度会って貴方に指輪をはめてもらいたかった…時間が随分たったけど、私の居る所からは魔女も貴方に手紙を届けるのは時間がかかるって言ってたから…」

それなら指輪と手紙はどうして一緒に届かなくて指輪だけ先に魔女は持ってきたのだろう…

「私の願いは二つだった…。願いは二つ一緒には叶えられなくて…その手紙は二つ目のお願いだったから…」

二つ?

「はい」

「一つ目の願いと引き換えに魔女は私の指輪を持って行ったの。…その指輪を何も言うことなく貴方に」

一つ目の願い…?!

「一つ目の願いは貴方に渡せなかったものを持ってきて欲しいってお願いしたの…」

渡せなかったもの?

「はい、そして私は魔女がまた来るのを信じて待ちました」

「実はね…私もあなたに渡したいものがあって…だけど渡せなくて…」

「ふふふ、何年もかかっちゃいました」

彼女は何か取り出す

…箱?

「…指輪です」

指輪?!

「貴方にプレゼントしたかったのに、奥にしまっていて…きっと貴方は見つけることができないんじゃないかって…そして自分で渡したかったから魔女に持ってきてもらいました」

「それが一つ目の願い…貴方にプレゼントしたかった指輪を持ってきて欲しいと…。その代償として魔女は私の大切な指輪、貴方にもらった指輪を持って行った」

どうして…あんなに弱った体で…
一言も言わないで…

「それは貴方と同じ気持ちだったから…プレゼントしたかったの」


「そしてまた魔女が何年もかけて来ました。そしてこの手紙…貴方に会いたいって願いをしました…これが二つ目の願い」

その願いで今ここにいて…目の前に君がいる。

「そう…この日をずっと待ってました。」

…封筒を見るともう一枚手紙が

「時間がかかったが…これで指輪の交換というのができるだろう。人間というものはよくわからないがお互い渡せなかったものを今日渡せるといいな。私も君を見てたらプレゼントをしたくなったのだよ。この舞台は二人へのクリスマスプレゼントだ。…メリークリスマス」

魔女からだった…

…魔女の引き換えの代償は指輪をうばったように見せて、落ち込んでいた自分に渡すためだったのか…

指輪はこの日のために、魔女は引き換えというルールの中で自分に渡した。そして彼女の願いを叶えて同じように引き換えというルールの中で自分に渡したかった指輪を彼女に渡した…。

魔女は願いを叶えることができる。大切な何かと引き換えに…それはその人にとってとても大切なもの。

そんな誓約の中で

最初からこの日を準備していたのか…。すべてを知っていた魔女は
二人が直接指輪を渡せることを願って。


光が二人を包んで神聖な夜にベルの音が鳴り響く

森の木々や動物が祝福している



二人は優しい時間に包まれて指輪をはめる

手には体温があって、温かくて懐かしい思い出が溢れてくる…

何年…何十年だろう

サンタから彼女へ

彼女からサンタへ…

二人の渡せなかったものはやっと直接渡すことができた。

これが夢だとしても

この時間がずっと続けば…

?!

ここに来た時の光が!
灯りが揺れる…

鏡に映る自分が年をとって行く

待って…!まだ話したいことがたくさん!!

「今日は23日…もう戻らないとね。貴方はたくさんの人に幸せを配ることができる。」



「あのね、貴方と暮らした時間は本当に幸せでした!」

「ずっと愛してます!!!」


ありがとう!

君を愛してる!!!!

あの時と変わら…

っ!?

光に呑み込まれる



最後に見た彼女の嬉しそうな表情を忘れることはないだろう。


時を経て二人の願いは叶った…これが本当に夢じゃないなら



カチッ

カチッ



時計の音…

気がつくと暖炉の前に座っていた…

夢だったのか

そうか…眠っていたのか

コン…

!?

指と椅子があたった時に音がした





指には彼女が買ったと言っていた指輪が…指にぴったりはまっている

魔女が叶えた彼女の願いは夢じゃなかった。あの時間は真実だったんだ…

ありがとう、魔女…君にはもう魔女という名前は相応しくないのかもしれないよ

「君も素敵なクリスマスを…」



おじいさんはそうつぶやいた。

おじいさんは封をきってから光と共に僕たちの前から消えた。

そして今、目の前に戻ってきた。

前より元気な顔をして

これはサンタさんへのプレゼントだったのかもしれない…

魔女がプレゼントとは可笑しなものだ…ははは

もうすぐクリスマス。



手袋の下には大切な指輪があるって話は本当かもしれない。

…そしてもうすぐみんなの街にサンタさんは行くよ。

プレゼントを届けに…

さぁ、サンタさんも準備万端だ!

トナカイはプレゼントをたくさん積んだソリと待ってる。

どんなに遠いところでも、願えば飛んでいく。

来年も再来年も

きっと願いは叶う、人種や信仰も関係なく。

夢と世界一の幸せな時間を運んでくる。





おわり。



(≧∀≦)
Yumemisi Asaki