朝霧が立ち込める中、射し込んだ朝日が暖かく辺りを照らす。きらきらと霧の輝く中で、草に付いた露も光っている。
朝早くに家の外に出た陽信(ひの)は、うんと伸びをした。まだ冷たい空気に、真っ白な息を吐く。
「早いな、陽信」
家の裏から、ひよっこりと青年が姿を現した。なかなかの美丈夫で、穏やかな顔立ちをしている。
「ちぇっ、一番乗りかと思ったのに」
悔しげな陽信に、青年は笑った。
「遅い遅い。俺より早く起きたかったら、あと二時間は早く起きな」
「廉兄は早過ぎなんだ」