「おーいっ、ウィリアム!起きて!朝だってば!」

ガンガンガン。

「うるさいなぁ……。俺は朝は弱いんだよ…。やたらとドアを叩くな……」

立て付けの悪いドアの向こうから、寝ぼけたウィリアムの声が聞こえる。

白いネグリジェを着たマリアは腰に手を当ててため息をついた。

「んもうっ。開けるわよ!?」

ドアを開けるとウィリアムが枕に顔をつっこんでうつ伏せていた。マリアは彼の布団を無理やり剥ぎ取った。

「もう5月だよ!?あったかいんだからシャキッとする!!」

頭がフラフラしているウィリアムの手を引っ張り、応接間に連れて行く。

この事務所は、意外なことに応接間と、他に2部屋ある。片方の部屋にはキッチンとシャワールームがついている。
マリアは家も失っていたので、その部屋で寝泊まりすることになったのだった。
そんな奇妙な共同生活が始まってから、早くも一週間。
さしたる危険には見舞われなかったが、依頼人も来なかった。

ウィリアムはソファに座らされたあたりで、ようやく目が覚めてきた。

「いつもいつもわりぃな。飯の支度までさせちまって。」

「いいよ。それより寝起きの悪さのほうが問題だと思うわ。いただきまーす」

トーストに、目玉焼きに、サラダ。一般的だが普段ウィリアムが食べているものより充実している。