「ま、汚いところだが、上がってくれ」

ウィリアムは建物の正面の、小さな石段を上がり、明らかにグラグラしているドアノブを回した。

後ろで、少女が顔をしかめている。

建物のコンクリートは黒ずんでいて、亀裂が縦横無尽に駆けめぐっている。

いつ建ったのかまったく見当がつかない。

少女は部屋に足を踏み入れると、

うわ……

とつぶやいた。

「なにこれ、埃だらけじゃない。あんたホントに、こんなところで仕事できてるの?」

「失礼なやつだな、やってるよ。まぁ月に4回依頼があればいいほうなんだけど」

「仕事がないだけじゃない!」

呆れた、と少女は肩を落とす。