――コンコン。

扉を叩く音に振り返りわたしは目配せで挨拶する。


「ごめん。邪魔した?」


「うんん。一区切りつくとこだったから」


えんぴつを置いて木製の四角いイスの上で向きを変え、教室の後ろの扉の横に立つ神林くんを出迎える。


神林くんはわたしの反応に少しほっとしたように笑顔を見せた。


「何描いてたの?」


「…秋の終わりを告げる校庭…、かな」



つい先日行われた生徒会選挙。

神林くんは会長に立候補し、見事に当選したんだ。


「不思議だね。長澤さんが描くとどんな絵にも温かみを感じる」


もう美術室には来てくれないと思ってた。


わたしの役目はすでに終わっていたから。