「やっぱり壁ドンだろう!!」
「壁ドン……?」

 朝練直後のバスケ部部室。
 より成功率の高い効果的な告白の仕方をメンバーたちに相談した俺は、首を傾げていた。

「女子が好きな行動ナンバーワン!! 脈ありサインナンバーワン!!」
「これで告白されたら、どんな女もイチコロらしい!」
「胸キュンってやつだな!」

 試合の作戦を練るときみたいな熱気に圧倒されるけど、俺はますます首を傾げるばっかりだ。

「壁ドンって……コラー、うるさいぞー! っていうアレだろ?」

 隣から聞こえてくる騒音に怒って壁をドンと殴って苦情するっていう、アレ。
 それで告白ってどういうことだ?
 壁を殴って壁越しの告白?
 確かに斬新かもしれないけど、それでときめくなんて女心はブラックホールだ。

「そっちじゃない方!!」

 とか思ったけど、なんだ。
 違うのか。

「どっちの方?」

 首を傾げすぎて、そろそろ首が痛い。

「知らないのか……?」
「知らない」
「マジで!?」
「今どき壁ドンを知らないとは……」
「時代遅れだな!」
「だから彼女できないんだよ」
「うるせー!」

 壁ドンを知らないぐらいで、どうしてここまで言われなきゃなんないんだ。

「いいから、教えろよ。その壁ドンっての」

 告白のアドバイスを受けているだけでも結構くつじょくなのに、ますますくつじょくだった。

「もっと勢いよく!」
「もっと激しく!」
「もっと強引に!」
「頑張れ幸太!」
「いけいけ幸太!」
「おまえの身体能力ならいける!」
「自分を信じるんだ!」
「頑張れ、幸太―!」

 妙にノリノリなメンバーたちに励まされて、俺は壁ドンの特訓を受けることになった。

 朝練の後にこんな練習をやることになるとは思わなかった。
 けど、これで彼女のハートを射止めることが出来るのならと俺は頑張った!

「もうオマエに教えることはない……」
「完璧だな!」
「よく頑張った。天晴れだ、幸太」
「あざーっす!」

 いい汗をかいた。
 大変だったけど、なんとか壁ドンを物にすることが出来た。
 本当にこんなので彼女のハートにダンクシュート出来るのか物凄く疑問だったけど、信頼するチームメイトの助言だ。
 きっと間違いない。
 試合だって、こいつらのお陰で勝ってこれたんだ。
 だからきっと、この恋だって……!

「放課後、茶道部部室に呼び出すメール送っといたから」
「もちろん、おまえのケータイでな!」
「てか、おまえまだガラケーかよ。懐かしすぎて操作忘れてたよ」
「なに勝手してんだー!!」

 こうして俺は急きょ壁ドンで告白することになった。