新しい教室は、別段一年の時と変わった風でもなく、全く同じ顔をして俺を迎え入れた。

高校二年の春。

俺、小田桐卓也は誰から見ても気だるそうな足取りで教室へと入っていった。

「卓也君も8組なんだぁ?」

席に着くと同時に、後ろから声をかけられる。

振り向くと、見慣れた小柄な女子生徒がニコニコしていた。

宗方由紀子。

一年の時も同じクラスで、その人懐っこさからすぐに親しくなった。

同級生にもかかわらず、どこか年下のような可愛らしさを持っていて、概ねどの生徒からも人気がある。

「何だよー、また小娘と同じクラスか」

俺は溜息をついて見せる。

小娘、というのは、俺がつけた宗方のあだ名だ。

生意気な宗方は、何だか小娘的なイメージがある。

ま、俺の私見だけどな。

「さってっと。他には誰か知り合いいるかなー?」

宗方はおでこに手を当てて、遠くの景色でも見るように教室を眺めた。