自分の運命の相手には、何か印が付いていて、それとわかるよう気づくことができるとパウラは考えていた。しかし、昨日の雨がパウラの考え一掃した。
ファイ・フィリアは話が上手いし、退屈しない。けど、彼女が雨に濡れるのを気づくことはなかった。
ルカ・コルテスは彼女に感心をもち、更に与える事をしてくれた。
例えるならば、ルカは部屋全体を暖める暖炉のような存在であり、フィリアの存在は派手な彼女の部屋を飾るインテリアなのだ。
ほっと息をつけるが、それまでだ。
寒い冬に暖炉がなくて生きられるのだろうか。
たちまち凍死してしまう。
パウラの女性的な部分とフィリアの性は一致しない。
そうありたいと願うフィリアの姿と、彼女の中にあるフィリアへの理想像は違うから、歪みが出てくる。
彼には思いやりがある。しかし、伝わりにくいのだ。
彼女と雨の日に帰った後、パウラがわざわざ遠回りをして一緒の道を帰ったと知り、フィリアは彼女を彼女がルカと帰った日、彼女を避けていた。
彼女を思っての事だが、パウラは酷く自尊心を害した。
持ち前のお嬢様気質がよりそうさせた。そこへ、騎士のようなルカ・コルテスが現れると、
パウラの恋愛観を築きあげた。
感心を持たれる事に充実した自分は、フィリアの天真爛漫な性格に合わないのだと、自分を庇い濡れるルカの肩を見てパウラ初めて自分の理想像をみたのだ。
いたたまれないパウラは、ルカのさす傘から逃げ出した。
「パウラ!?」
逃げ出した守るべき者を追いかけたルカは、さながらドン・キホーテのように傘をパウラにさす。
「いいこと、傘は濡れない為にあるのよ。」
逃げ出したとはとても思えない表情で、パウラはルカに命令した。
「わかりました、お嬢様。」
とパウラにルカは騎士の如く従った。
パウラの家にたどり着くと、パウラはこの先も雨に濡れる運命にあるルカに、花柄の傘を貸した。