革命が起こる時、民衆は希望を抱くがザイン帝国が築かれた時に民は絶望した。

レーシュの民はフォト・グレイシャスという種族が実質的王権を有しており、フォト・ニンフ、メノウ、フローラル、などに影響を与えていたが、押し並べてレーシュ族としていたが、古いフォト・グレイシャスの老人たちは、こだわった。フォト・グレイシャスの長オブシデアン・カルセドニーに楯突いた者がいた。
メノウを指揮するオニキス軍元帥ブラック・オニキスである。
トラメの森という、レーシュの国より北西部に繁る森には、黒エルフを治めるジェット【黒琥珀】が怪しげな国を築き上げていた。
メノウやフローラルがトラメの森からオブシデアンに仕える事も珍しくはないけれど、あまりなかった。

レーシュの城には美しいカルセドニーのお嬢さんが、夢のようなアイリスの泉が湧くレーシュ城の中庭で、自分のユニコーンとくつろいでいる。
ユニコーンは眩しいほどに白く、カルセドニーのお嬢さんの傍にいることをこの世の至上の歓びとした。ユニコーンはお嬢さんが、生まれた時にアイリスの女神から贈られ、名前を英雄からジーグリーフットとつけた。ペガサス座の星に望む翼の跡を撫で、カルセドニーのお嬢さんは、花々を愛でた。
レーシュの城に仕えるロジンという大尉が、
カルセドニーのお嬢さんの中庭へやって来た。
お嬢さんは大尉を見つめ、微笑むと大尉も微笑みを返した。
誤解を先にしないように、大尉にはちゃんと妻子がいて、お嬢さんには好意は抱いていない。
けれども小さいころからお嬢さんを知っているものだから、大尉はお嬢さんを自分の子供のように愛情を抱いている。命をかけて護る覚悟もあった。
中庭へやって来たのは、カルセドニーのお嬢さんが、大尉を呼んだからである。
何かとこれがばれても面倒だが、お嬢さんに逆らっても王にあることないこと告げ口され、面倒なのだ。

お嬢さんは大尉から、軍隊の話を聞きたがった。
「お父様は、はしたないから止めなさいと
教えてくださらないの。」
座り込む大尉の耳に白く小さな花を飾り、お嬢さんは微笑すると、恋人ごっこのようで、幸せだった。
大尉は忠実な僕のように、軍隊の話を聞かせた。
決して女性が軍隊に係わることを、オブシデアンは非難したわけではなく、ただ、カーネリアン・カルセドニーという兄がいる為カルセドニーのお嬢さんまで血生臭い事を引き受ける必要はないと、考えていたまでである。
ある時、大尉が中庭に下りて行くのをレーシュの城で料理番をする女中に見つかり、覗きではなかと疑われ、オブシデアン王に報告された。カルセドニーのお嬢さんは大尉をかばってくれ、穏便にと頼んだが、オブシデアン王は自分の下に報告がなかったことを酷く怒り、
ロジン大尉をレーシュの国から追放してしまった。
あれだけ尽くしたロジン大尉を、一時的な感情で刑を命じるオブシデアン王に、オニキスは不信感を抱いた。ロジン大尉はトラメの森に詳しく、ジェットのあり方に、核心的な事実を掴んでおり、トラメの森に平安を施す矢先だったためだ。
話術はエルフの中でもひけ劣らないほどのもので、お嬢さんに気に入られた要因でもあった。

話術が招いた今回の顛末なら、話術で復讐しようと、ロジン大尉はトラメの国に立った。