こうして新たに始まった生活は、忙しくも張りのあるものだった。

初めのうちは泣いてばかりいた千絵ちゃんも、しだいにこの家での生活に慣れていった――。






子どもというのはなんて愛くるしいのだろう。

毎日新しい発見があり、そのたび思う。
 

瞬間ごとに変わる表情や、舌足らずな話し方。


生えそろった小さな乳歯もたまらない。


膝の上で眠ってしまったときの、無防備な重み。

支える私の腕がじんじんと痺れ、それさえも愛おしかった。
 


一年が過ぎた頃、
私はあの子を“千絵”と、そしてあの子は私を“ママ”と呼ぶようになっていた。
 

この頃から千絵は何かにつけて、私の真似をしたがるようになった。



「パパのお洋服、千絵がたたむの!」


取り込んだ洗濯物を畳んでいた私の横に、ちょこんと千絵が座る。


「じゃあお願いしようかな」


と答えると、その言葉に満足気な顔。


そして彼のパジャマを床に広げ、私を手本にしながら畳み始める。


おぼつかない手つきで大人と同じことをする姿が可愛らしく、見ているだけで頬がゆるんだ。


「できたよ!」


「すごい、上手だねえ!」