別荘へ向かう途中に、髪を短く切った。



あの夜、光に触れられた長い髪は、

軽快なリズムのはさみの音と共に

床へ落ちる。



一人で住むには広すぎる別荘だが、

とても空気が綺麗で、私はここで一生暮らすことを心に決めた。




もう恋はしない。



もう何もいらない。




ここで、息子と家族の幸せを祈りながら生きて行きます。





夫が改装工事をさせた部屋は、新築の家のように綺麗だった。


家具も家電も全て揃っていた。




寝室の窓に飾られていた大きな真っ白な花瓶。



真っ白でまん丸なその花瓶は、月に似ていた。



花瓶に挿してある白梅の木。



まだつぼみもついていないその枝は、もう帰ることのない我が家の庭のものだろう。






そうか・・・


あれからもうすぐ一年になるのか・・・