「パン、そのまま? 焼く?」

六時に和泉くんの目覚ましがなった音に気づいてリビングに行くと、スウェット姿の和泉くんがそう聞いた。
その手には六枚切りのパン。

「どっちかって言うと焼きたいけど……和泉くんは?」
「俺も焼く」
「じゃあ一緒にお願いします。
……おはよう。昨日は泊めてくれてありがとう」

改めてお礼を言うと、和泉くんはパンをオーブントースターにセットしながら話す。

「あんなソファじゃよく眠れなかっただろ」
「ううん。熟睡だった。ソファで寝るの慣れてるから逆に落ち着いたよ」
「……もう聞きたくもないけど、それはダメ男のせいでだろ?」
「あー、うん。まぁ」
「どうせ、ベッドがシングルだからふたりで寝るのは狭いだとかいう理由で追い出されたんだろ。
元々おまえの部屋でおまえのベッドなのに」

図星をつかれて、はは、と苦笑いだけしていると、朝から重量級のため息をつかれてしまう。

昨日は閉まっていたこげ茶色のカーテンも今は開けられていて、レース越しの柔らかい日差しが部屋いっぱいに降り注いでいた。
日当たり良好ってこの事だ。