《大河side》

ーーヒュオオオオーー

………俺は今、この辺りで1番でけぇ

病院の屋上にいる。

何故、こんなところにいるかって?

ーーそれは、今から1時間前に遡るーー






ーーー1時間前



『お前にはこの篠塚財閥を継がせない。

自分の好きなように、どこかへ行け。』


「なッ………。

おやじぃ、それはねぇだろ?」


『勉強どころか、まともに礼儀も知らん

クソガキにこの大切な財閥は

継がせない!!』


「………あぁ、そーかよ。

そんなに言うなら望みどーり

出て行ってやるぜ、こんな家。」


……………クソだりぃ………………。

最悪最低だ、これは………。





俺はこの日本において有名な篠塚財閥の
御曹司である、篠塚 大河。

俺はずっと小せぇ頃から、
親父が稼いだ金で贅沢な暮らしをしてきた。

そんなふうに何不自由なく生きてきた俺は、いつの間にか………








親のすねかじりをしてるだけになっていた。








その事に既に気付いてた俺は、

それを認めたくなくて現実から目を背けてた。

そしてそれを隠すため、俺は虚勢をはってた。


多分無意識のうちに…………。

親父は恐らくそれを見破ったんだろう。




その時俺はむしゃくしゃしてた。

だって、それじゃあ金が使えねぇし……。

あげく財閥を継げられないってなると………

俺の人生終わりじゃね??



………だりぃ。

財閥継げれねぇなら………













死んだ方がましだ。






………で、その後、今に至る。

さすが、この辺りで1番でけぇ病院だぜ。

高さもハンパねぇ。




これなら一息に死ねるな。



そして、足を踏み出しかけた途端ーーー











「…………あなた、何してるの。」



いきなり女の声がして思わずビクってなってしまった。

振り返ると、同い年くらいの女。



ーーー車椅子……?


その女は、車椅子に乗っていた。

……………どつか悪ィのか?






その後、何故か俺はその女に説教され、
気分を害した俺は、そのまま屋上を去った。



あー、胸くそ悪ィ。

イライラが止まんねぇ。





あれ、でも、そーいえば…………


さっきあいつ、『ここには………
あたしのような』って言ってたよな……。


つまり………
あの女も、いつ死ぬか分からねぇのか。


あんだけ俺が自殺しようとしてるのを
止めるわけだ。


そんだけ、生きたいんだろうな……………













ーーーー守りたい。










ふと、そう思った。




俺の周りには、初めて会った、
しかも説教してきた女なんか
今までどこにもいなかった。


どいつもこいつも、俺じゃなく、
俺の財閥の御曹司としての地位を狙ってきて…



だけど、あの女は言い寄るどころか、
説教してきた。



説教だよ、説教っ…………
アハハハ……………






つい笑ってしまった。











そんなこんなで、初めて会った、
あげく説教してきたあの女が、
大河の頭の中に浮かぶ。




大河はいつの間にか、『自殺』という
言葉すら、頭の中にはなかった。