「ちなみ、おはよ!」

夏休みが明けたと言うのに、暑さは収まるどころかむしろ私たちの体力を消耗させた。気だるい体を引きずって登校しているというのに、彼女だけは元気だった。そのはずだ。彼女は指定校ですでに進学が決まっているからだ。

「おはよう、愛佳」

彼女の名を呼ぶ度に、私の心はきしむ。まっすぐに、彼女の目を見ることができなかった。

「勉強は、順調? 学部は全然違うけど、絶対同じ学校に行こうね」

私の思いには全く気付くことなく、眩しい笑顔で彼女はそう言うと、私の勉強の邪魔をしまいと、自分の席に戻って行った。