荷物を抱えたまま、私は両腕を抱いた。あんな風に触れられたのは、初めてだった。心臓のとどろきが蘇り、私は今にも発狂しそうだった。

なぜ、優しくなんてするの…

いや、恭介はいつでも優しい。それなのに、今日は何でこんなに切なくなるんだろう…

ドアにもたれ、そんなことを考えていると、ドアを軽く叩く振動が背中から伝わってきたのだ。思わず、背筋をビクっとさせながら、振り向いていた。

「ちなみ、そこにいるんだろ? 開けなくていいから、聞いて」

ドアの外でしゃべっているのは、恭介だった。

「お前の夢、獣医だったよな? なら、愛佳ちゃんと同じ大学に行けるんだよな?」

確かめるように、強い口調で恭介は言った。確かに、愛佳が指定校推薦で行く大学にも、獣医学部はある。

「なら、絶対に一緒の大学に行こう」

彼のその言葉に、私の体温が一気に上がるのを感じた。

まだ私を利用するの…? まだ相談に乗ってあげないと、だめなの?