夏も過ぎれば、周りも受験モードにシフトしていくのは当然のことだった。はっきり言って、恋愛などしている場合ではないことは、わかっている。

そんな頃の出来事だった。いつものように登校し、上履きに履き替えようと下駄箱を開けると、中に真っ白な封筒が入っていたのだ。

手に取り封筒を眺めていると、「ラブレター?」と後ろから愛佳が声をかけてきた。私はびっくりして振り向くと、目の前には彼女と、今来たばかりの恭介がいた。

「おはよう…」

手紙を手にしたまま、私は自分を落ち着かせるためだけに、二人に挨拶をした。

「ちなみ、すごーい! それ、やっぱラブレターだよね?」

人のことだというのに、なぜか愛佳が目を輝かせて興奮していた。

「いや、どうだろね…? 正直、この時期にもらってもね…」

私は苦笑いを浮かべながらそう言うと、「果たし状だったりして」と、意地悪い笑顔で恭介が口を挟んできたのだ。

思わず彼の頭に一発、ポカッと叩くと、私は手紙をカバンに入れて、教室に向かって歩き出した。