街はキラキラのイルミネーションとカップルの姿で溢れ返っている。

……日付も変わってしまったというのにお元気なことで。

そう思いながら、コートとマフラーに包まれた私は一人、雑踏の中を歩いていた。


「あー、さむっ」


急な冷たい風に吹かれて、私はぶるっと震えた。

こういう日は早くあの場所に行きたい。




目的の場所が見えてきて、心がほわっと温かくなったのを感じた。

私の目に写るのは、“相馬軒”(そうまけん)と書かれた、風にゆらゆらと揺れる赤い提灯(ちょうちん)。

どんなキラキラした色とりどりの電飾よりも輝いて見える、私にとっての最高のイルミネーションだ。


……そこは私の癒しの場所、週に2回ほど通うラーメン屋さん。