瀬奈と愛し合った翌日から、再び体調を崩した快は、二日連続で学校を休んだ。
「神童くん、今日も休み?」
快の席を見た菖蒲が瀬奈に聞いてくる。
「うん」
瀬奈がうなずいていると、快と仲の良い男子生徒の山科隼人(やましなはやと)が足早に近付いて来た。
「おい、城ヶ崎」
名前を呼ばれ、瀬奈と菖蒲が隼人を見る。隼人と快は中学からの付き合いで部活でも同じ短距離をやっている。恐らく男子の中では彼が一番、快と親しく、また、一番心配しているだろう。
「快、とーなってんだよ」隼人が少し苛立った様子で瀬奈の机に両手を付いた。
「あいつ最近、メールも返さねーし、電話も出ねーし」
「……ごめん」
隼人の言葉に、自分の事ではないのに瀬奈が謝る。隼人はそんな瀬奈を一瞥し、やはり苛ついた様子で続けた。
「あいつ、体調悪すぎじゃん」
「……うん」
隼人の目が"彼女のお前なら、何か知ってんだろう?"と言っているように思え、瀬奈は無力感に胸が痛んだ。
「……医者には"何でもない"って言われて……。快もあたしも、おじさんたちも信じてはないんだけど……」
「ええっ?」
瀬奈の言葉に、隼人は怪訝な表情を見せ、少し後ろに引いた。「何でもないって……」
「……うん」
そこでHRを告げるチャイムが鳴り、隼人は何だか納得いかない顔で、自分の席へ戻って行った。
――ごめんね、山科くん。
HRが始まり、担任の声が右から左に流れる中、瀬奈はそっと拳を作った。
――馬鹿なんだ、あたし……。
瀬奈はそのままゆっくり、あの日の事を思い返した。
「今日、一人なのか?」
帰宅する為一階に下り、ダイニングテーブルの上の一人分の食事を見た快は、そう言って後ろにいる瀬奈を振り返った。
「うん、今日はお母さん、おじさんのとこ」